インプラントについて
失った歯の代わりに人工の歯根を顎の骨に埋めて、天然歯に近い機能を取り戻す治療方法です。人工歯根を埋め込むためには手術が必要であり、口腔外科診療の経験や知識が不可欠です。
当院では、口腔外科の専門医であり、専門的な診療経験を長く積んできた院長が手術を行っています。
高い精度を要求される口腔外科手術
手術ですから麻酔の専門的な知識も不可欠ですし、高度な感染対策と衛生管理も求められます。また、上下の顎の骨は鼻や耳、目にかなり近く、重要な神経や太い神経が通っています。そのため、立体的で精密な検査や診断、口腔外科の専門的な知識に基づいた精緻な手術を行う必要があります。
顎の骨の手術では、動脈を傷付ければ止血が困難なほどの出血を起こす可能性があります。また、神経を損傷した場合、しびれや麻痺、よだれが止まらないなどが起こり、時間が経過しても十分に回復できないことがあります。
さらに鼻腔を傷付ければ副鼻腔炎(蓄膿症)の発症につながるなど、鼻・耳、目などの近接した組織に大きなダメージを与えることも考えられます。
顎の骨の状態によっては、骨を造る治療を行わないとインプラントが骨とうまく結合できなかったり、他より歯ぐき部分が短くなってしまうなど見た目に悪影響を与える可能性もあります。
インプラントの構造と口腔外科の手術内容
インプラント体を埋め込む手術
インプラント治療は、人工歯根であるインプラント体を埋め込む手術を行って、そこに人工の歯である「上部構造」を連結させます。連結にはアバットメントというパーツを使用します。インプラント治療では、インプラント体を顎の骨に埋め込む手術、そしてインプラント体にアバットメントを取り付ける手術が必要になります。
その際に、歯ぐきの切開、顎の骨を削るなど口腔外科の処置を行います。この2つの手術を同時に行うケースもありますが、基本的にはインプラント体を埋め込む1次手術、アバットメントを取り付ける2次手術にわけて行われます。
骨の不足を補う手術
インプラント体を支える顎の骨が十分ではない場合、顎の骨を造る手術、骨の再生を促進させる手術、骨の移植手術などが必要です。
骨を造る手術にはサイナスリフトやソケットリフトがあります。
骨の再生を促進させる手術には人工膜のメンブレンを用いるGBR(骨誘導再生)があります。
骨の移植手術にはベニアグラフトやオンレーグラフトがあり、これはご自分の骨を移植するものです。
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歯肉移植手術
歯肉移植は、歯ぐきの厚みを回復させる手術で、結合組織移植や遊離歯肉移植があります。
2回法とは
インプラント治療では、失った歯の代わりに人工の歯根であるインプラント体を顎の骨に埋めて、そこに人工の歯である「上部構造」を連結させます。
この連結にはアバットメントというパーツを使用します。その際に、インプラント体を顎の骨に埋め込む手術、そしてインプラント体にアバットメントを取り付ける手術を行います。この2つの手術を同時に行う1回法と、インプラント体を埋め込む1次手術とアバットメントを取り付ける2次手術にわけて行われる2回法があります。
2回法では、まずインプラント体を埋め込んで歯ぐきを閉じ、インプラント体と骨が結合してから2回目の手術を行います。2回の手術の間は3ヶ月から半年程度です。
インプラント体が骨としっかり固定してからアバットメントを連結させることができるため、顎の骨が少ない方や既往症があって感染リスクが高い方など、幅広い方にインプラント治療が可能になります。また、1次手術と2次手術の間に顎の骨を増やす治療を行うことも可能です。
メリットとデメリット
メリット
幅広い方が治療を受けられる
全身疾患がある、顎の骨が少ない、審美性の高い治療を受けたいといった方でも受けられる方法です。
感染リスクの軽減
インプラントが結合する期間を設けるので、感染リスクを軽減できます。
治療内容が幅広い
オーバーデンチャーなど、幅広い治療内容に対応できます。
デメリット
2回の外科手術
手術の回数が増えるため、お身体への負担も大きくなります。
治療期間が長くなる
骨とインプラント体がしっかり結合する期間が必要なので、治療期間が長くなります。
費用が比較的高額
使う部品が多く、手術も2回行うため、費用は比較的高くなります。
ネジの問題
インプラント体とアバットメントはネジで連結されますが、このネジがゆるむことがあります。
こうしたデメリットは、精密な検査に基づいた診断と治療方針の決定、そして定期的なメンテナンスによって回避可能です。
2回法の流れ
11次手術 インプラント体を埋め込む手術
麻酔を行って歯ぐきを切開します。 埋め込むインプラント体と同じ長さ・太さの穴をドリルによって顎の骨に開けます。
インプラント体を埋め込みます。インプラント体の上部にはアバットメントをつけるためのネジ穴がありますが、これが新しい骨や歯ぐきなどの組織でふさがれてしまわないようにカバーを装着します。
カバーまでしっかりおおうように切開した歯ぐきを縫い閉じて1次手術は終了です。
2結合期間 骨とインプラント体が結合する期間
1次手術後は、埋め込んだインプラント体と顎の骨が結合するまで、約3ヶ月から半年程度の安静期間を設けます。この期間は、治療部位や骨の状態などによって変わります。
32次手術 インプラント体にアバットメントを取り付ける手術
麻酔を行って歯ぐきを切開します。
インプラント体が新たにできた骨に結合しているため、上部のカバーの上にできた骨を取り除き、インプラント体からカバーを取り外します。
アバットメント連結を妨げる上部の骨を削り、インプラントにアバットメントを連結します。この際に仮のアバットメントを使用する場合もあります。これで2回目の外科手術は終了です。アバットメント上部が歯ぐきの上に出ている状態です。
4人工歯の取り付け
かみ合わせを入念に確認しながらアバットメントに人工歯を取り付けます。2次手術で仮のアバットメントを入れていた場合にはそれを交換してから人工歯の取り付けとなります。
当院で扱っている2回法インプラントシステム
ブローネマルクシステム/ノーベルスピーディ/ノーベルリプレイス
ノーベル・バイオケア・ジャパン株式会社
インプラント体の表面が安定した高い骨伝導性を持っています。そのため骨との結合の促進を期待できるシステムです。また、選択肢も豊富です。
カムログインプラント
株式会社アルタデント
ドイツで開発されたシステムです。基礎研究と臨床研究を長く行ってきています。
I.T.Iインプラント
ストローマン社
インプラント体の表面を酸処理することで粗面にしています。これにより骨とインプラント体の結合を強化・促進可能になります。治癒期間も短縮できる可能性があります。
アストラテックインプラント
アストラテック株式会社
インプラント体周囲の骨に対して短期的・長期的な保護に優れています。
骨の不足を補う手術
サイナスリフト(上顎洞底挙上術)とは
上の奥歯を失ってしまった際には、上顎の歯槽骨の上にある「サイナス」という空洞が拡大してしまいます。インプラント治療では、歯槽骨の厚みが最低でも10mm程度ないとインプラント体と骨がうまく固定できません。また多数の歯を失っている場合にもインプラント体を入れるスペースが不足しているケースが多く、そのままではうまく固定しません。
そうした場合に行うのが、サイナスリフトというこの骨移植治療です。
事前にサイナスリフトという骨移植を行って、3ヶ月から半年程度待って骨の量を十分増やしてからインプラント体の埋入手術を行います。
骨移植にはソケットリフトという方法もありますが、サイナスリフトはより骨の薄い方にも対応できる治療法です。
ソケットリフトについて
インプラント治療では、歯を支える歯槽骨の量が十分でなければインプラント体が骨にしっかり固定できません。そのため、骨の量が不足している場合には、骨移植を行って骨の量を補う必要があります。
ソケットリフトは、歯槽骨の幅には問題がなく、高さが不足しているケースに行う骨移植です。ソケットリフトでは、顎の骨を1mmだけ残して穴を掘り、それを持ち上げて移植骨を入れ、インプラント体を埋入します。インプラント体を埋め込む手術と同時に行うことができ、お身体への負担も抑えられる治療法です。
GBR(骨誘導再生)法について
歯を失ったり、歯周病で骨が溶かされてしまった場合に、欠損した骨組織の再生を促進する目的で行うのがGBR(骨誘導再生)法です。歯槽骨や顎の骨の再生を誘導できます。
歯を失ってから長い時間が経過しているとより歯槽骨の量が少なくなってしまう傾向があります。骨の量が足りなければインプラント治療は不可能ですから、骨移植やGBRで骨の量を増やす必要があります。
GBRはインプラント体の埋入と同時に行うことができる治療法で、自家骨や骨補填剤を用いて骨の再生を促します。歯肉が自然な形を取り戻すことができるため、審美性も高くなっています。
GBR(骨誘導再生)法の流れ
歯肉を切開してインプラント体を埋入します。歯槽骨が不足しているため、インプラントの表面が歯槽骨から露出しています。
露出している部分に自家骨や骨補填剤を入れ、専用の膜である人工メンブレンでおおって歯肉などの軟組織が侵入するのを防ぎ、歯肉を戻して骨の誘導再生を促します。
骨の再生には個人差がありますが、半年程度でほとんどの場合、十分な再生が期待できます。再生までの間は、できるだけ患部に刺激を与えないように心がけてください。
骨が再生されてインプラント体がしっかり固定されたら上部構造である人工の歯を装着して治療終了です。